ＧＢＮ全国草野球大会

2014年度シーズンの最強チームを決める全国大会「GBN DOME FINAL'2014」（4/29祝・西武プリンスドーム）を制し、初の日本一に輝いたのは、中部代表・BRONZEだった。

準決勝では、大会史上最多となる過去2度の全国制覇を誇る関西代表・中央シャインズを相手に、8番・井坂の柵越え本塁打で1-0完封勝ちすると、続く関東代表・神田川メイツとの決勝では、特別ルールサドンデスの末に4番・難波のサヨナラ打で2-1劇的勝利。

戦前より打力に高い注目が集まったBRONZEだったが、準決勝、決勝を一人で投げ抜いたエース・村田の好投も光り、見事に接戦を競り勝って、全国大会初出場にしていきなりの日本チャンピオンの称号を手中に収めた。

神田川メイツ先発・倉永は走者を出しながらも3回を無失点に抑える

4回から2番手として登板した水澤も2イニングをゼロで抑える好投

6回表、8番・根岸がタイムリーを放ち、メイツが遂に1点を先制する

BRONZEは準決勝を一人で投げ抜いた村田がまさかの連投。しかし、疲れを見せないどころか、投げるほどに勢いを増す圧巻のピッチングで、5回をノーヒットノーランに抑える好投を披露すると、対する神田川メイツは関東決勝（東京ドーム）と同じ倉永－水澤の継投で、ランナーを出しながらも粘り強く凌ぎ、同じく5回を無失点に抑える緊迫の試合展開となる。

時間規定により、6回から一死満塁サドンデス特別ルールに突入すると、先攻の神田川メイツは、先頭の8番・根岸が村田の初球をものの見事に弾き返し、これが痛烈に三遊間を破るタイムリーとなって、いきなり1点を先制する。

ここまで快投を続けた村田は、サドンデスの局面で痛恨の一打を食らうも、ここから見事に切り替え、我に返って再びテンポ良く後続を打ち取り、裏の味方の反撃に望みを託す。

窮地に立った後攻のBRONZEだったが、こちらも先頭の4番・難波が、水澤の同じく初球を振り抜くと、打球は遊撃手の横を抜けて走者2人が生還。この瞬間、BRONZEの逆転サヨナラ勝ちが決まり、2014全国大会はBRONZEの日本初制覇で決着した。

準決勝に続いての連投となった村田だが見事なピッチングで会場中を魅了した

5回裏、先頭の8番・井坂がライトへのヒットで出塁するも得点ならず

1点を先制された直後の6回裏、4番・難波が逆転2点タイムリーを放ち決着

それまで0-0の緊迫戦だったが、サドンデス突入即表に1点をリードされ、後が無くなった。この重苦しい空気の中打席に向かったのは、この日それまで2三振と当たりの無かった4番・難波だった。

主砲の難波は、同時にチームの主将でもあった。故に、準決勝からの村田の力投に何とか報いたいと言う思いは、人一倍強いものがあった筈である。

自身の意地の一振りでサヨナラが決まった瞬間、雄叫びを上げた彼の表情からは、歓びよりもむしろ安堵の色が見て取れたのが、それを如実に物語っていた。

当然ながらヒーローインタビューに呼ばれた難波。試合前は奔放な振る舞いが目に付いた彼だったが、お立ち台では「最高です。会長を始め、今井社長が作ってくれたこのBRONZEを、初めて日本一に出来た。」と殊勝に胸を撫で下ろした。

今井監督も「昨日、難波キャプテンと『一緒にヒーローインタビューを受けよう』と約束して臨んだので、有言実行、本当に良かった。」とし、「チームの4番が打って勝てた、本当に素晴らしい。」と手放しで主将・難波を称えた。

力強い真っ直ぐ、キレのあるスライダー、大きく縦に割れるカーブ、そして大舞台で連投し好投する桁外れのスタミナと、並の投手には持ち得ない武器を、BRONZEのエース・村田はいくつも持ち合わせる。

しかし、それら一級品の武器もさることながら、この日の彼は「テンポの良さ」が何より最も光り輝いていた。

「井坂さんを信じて、ミット目掛けて投げた。」と言う村田は、井坂捕手から球を受け取る度に、何の迷いもなくすぐさま次の投球動作に入った。

こうなると、必然的に味方の援護に恵まれる。準決勝では井坂の柵越え弾を、決勝では難波の逆転打を生み出したのは、まさに彼のテンポの良さに起因するところが大きかったと言える。

「緊張した」としてサドンデスのド頭で1点を失った村田だが、その後を鬼気迫る表情でやはりテンポ良く打ち取った様は実に見事だった。今後益々の活躍が大変楽しみな大型右腕から、この全国大会を通じて改めて「テンポの重要性」を教えられた。

先日の東京ドームでの関東決勝でMVPに輝いた神田川メイツの根岸。

一死満塁から先制タイムリーを放ち、関東制覇に貢献した彼だが、この全国決勝で一死満塁からの特別ルールサドンデスに突入した最初の打者がこの根岸だったから、彼の持つ巡り合わせには驚かされる。

サドンデスの雰囲気に全体が呑まれる中、「呑まれたら負けだと思った、どうにか弾き返してやろう、自分のペースに持って行こうと打席に入った」と言う根岸。「球種は特に張ってなかった」としながらも、まるで真っ直ぐが来ることを見切っていたかのように、村田の初球ストレートを完璧に弾き返した。

痛烈な打球が三遊間を抜け、三塁走者が生還、メイツが1点を先制した。まさにあの時、関東決勝での先制時の再現を見ているかのようだった。

当然ながらベンチは歓喜に沸き捲った。しかし、打った根岸本人は塁上、ニコリともしなかったのは実に印象的だった。

彼の一打で誰もが「メイツが勝った」と思ったが、直後に非情にもサヨナラに遭う。根岸に笑顔が無かったのは、研ぎ澄まされた集中力の先に、あるいはこれが見えていたのかもしれない。

中央シャインズ先発・飯田は4イニング連続三者凡退の快投

3回表、一死から1番・川口が左前ヒットで出塁するも、続く初球に盗塁死

最終回、先頭の3番・藤原が自身2本目のヒットで出塁しその後二塁まで進むも、得点ならず

BRONZE先発・村田は、いきなり二者連続三振と鮮やかな立ち上がりを披露すると、その後も二塁を踏ませないまるで危なげないピッチングで、相手スコアに零を並べる。

対する中央シャインズ先発・飯田は、初回二死から3番・柳田に安打を許すも、後続を打ち取りゼロで立ち上がると、続く2回から5回まで4イニング連続三者凡退と圧巻のピッチングを魅せ、5回を難なく零封する。

両投手の見事な投げ合いで、どちらもまるで点が入りそうにない緊迫の投手戦が続いたが、6回裏、BRONZEは先頭の8番・井坂がレフトスタンドへソロホームランを叩き込み、好投の飯田から遂に1点を先制する。

土壇場で先制を許した中央シャインズは、直後の最終回、先頭の3番・藤原がセンター前ヒットで出塁しその後一死二塁と初めて得点圏に走者を進めるも、村田の前に後続が打ち取られてゲームセット。

両投手が被安打3無四球と実に壮絶な投げ合いだったが、井坂の一発で決着し、勝ったBRONZEが決勝に駒を進めた。

BRONZE先発・村田は散発3安打8奪三振に抑える好投で見事完封

3回、捕手・井坂が強肩を魅せ二盗を阻止して村田を援護する

6回裏、先頭の8番・井坂がレフトスタンドへ特大ソロを放って試合を決める

初めて見た。にも関わらず、打った瞬間にそれと分かった。

緊迫の投手戦が続き、0-0で迎えた大詰め6回裏、先頭で回って来た井坂は、それまでほぼ完璧なピッチングを続けて来た飯田の初球を、豪快にレフトスタンドへ叩き込んだ。

凄まじいスイングと共に凄まじい音がした。静まり返る場内。ほどなくして、レフトスタンドで白球が弾んだ。各地ドーム決戦や全国大会など、これまでドーム球場で開催されたGBN公式戦は128試合を数える。その間、一度も出なかった柵越え本塁打が、遂に129試合目で飛び出した。これまでも大きな当たりは幾度となく見てきたが、いずれも「行ったか！？」と思わせておいて、フェンス手前で失速。軟式球でのドーム柵越えは、もはや不可能と決め付けていたが・・・それが出た。「行ったか！？」では無かった。井坂の一発は打った瞬間「行った！」だった。

大会史上初の驚弾。打った本人は「あんな当たりは人生で初めて」と驚いて見せたが、あの構え、あの振り。絶対謙遜であることは間違いなかった。

「村田が頑張っていたので嬉しい」とし、それでも「僕はバッティングは正直二の次」とあくまで捕手・井坂を強調した。確かに好リードのみならず強肩をも披露し、捕手として村田を強力にバックアップした彼は、語り口が実に柔らかく、誠実さが溢れ出る好漢でもあった。

この日の飯田は凄かった。

初回二死から3番・柳田にヒットを許すも、5回までに許したランナーは唯それだけ。強力BRONZE打線を相手に、2回から5回まで4イニング連続パーフェクトに抑えるなど、本当に素晴らしかった。

それだけに、野球の恐ろしさが余計に際立った。まさに一球に泣いた飯田。6回先頭の井坂に初球をレフトスタンドへ運ばれ、一瞬にしてそれまでの好投がフイになった。

「（負けたのは）飯田のせいでは全然無い」とした小林監督。ストライク・ボールの判定に苦しむ場面

も見受けられながらも、泣き言や言い訳を一切言わずに、最後まで見事に投げ抜いたエースを労わった。

一球に泣いた、と書いたが、実際は違った。泣かなかった。一発を浴びた直後。飯田の顔には「納得」と言わんばかりの清々しい笑みが零れていた。いつもは逆の立場で試合を決めることの多い稀代の天才スラッガー故に、そうした「野球の恐ろしさ」が、逆に「野球の楽しさ」にすら映るのだろうか。敗れはしたものの、間違いなく大会史に残る名勝負を演じた飯田は、「是非とも来年リベンジしたい」と爽やかに会場を後にした。

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